ささえたまご農園研修生にインタビュー(後編)

養鶏を学びに敦賀へ。
2人の研修生とささえたまご農園のカンケイ

敦賀市沓見の養鶏場「ささえたまご農園」に2021年12月から1年間の研修にやってきた2人の若者。永平寺町を拠点に古民家改修などを行い県内メディアにもその取り組みが取り上げられる彼らがなぜ敦賀まで研修に来ているのか、前編では、2人の思いを深掘りました。では、実際にささえたまご農園ではどのような養鶏をおこなっているのか、後編では研修の内容や農園の特徴を掘り下げていきます。

左:農園主の佐々江良一さん/中央:研修生の芳沢郁哉さん/右:研修生の薗有希さん

■たまごから垣間見える地域内の「循環」

研修期間中は、農園内の部屋を借り、住み込みで生活をしているという2人。毎日どのように過ごしているのでしょうか。

芳沢さん:朝9時から夕方6時まで、大きく分けて鶏の世話とスイーツ作りの2つを教えてもらっています。具体的に鶏の世話というとエサをあげたり、たまごを回収したり。2週間に一度はエサ作りをします。エサにも農園独自の特徴があるんですよ。

これからエサやりをするという2人に同行させてもらった

佐々江さん:うちでは、発酵させたエサを与えています。材料は主におからなのですが、このおからは吉田由兵衛商店という敦賀のお豆腐屋さんからいただいています。おからは、豆腐屋さんが捨てると産業廃棄物に分類されてしまいますが、非常に栄養価の高い資源なので、いただいてエサとして活用しています。ただ、おからは日持ちしないのが難点。そこで、発酵をさせて保存性を高めているんです。発酵食品は、人間だけでなく鶏の健康にも良いんです。消化吸収がよくなるので、鶏が元気になり、良いたまごを産んでくれます。

これが手作りのエサ。発酵しているため、触るとほんのりと温かかった

芳沢さん:養鶏は、こういう「循環」の中にあるところが素晴らしいんです。ささえたまご農園では、他にもクズ野菜を農家さんから引き取って鶏に与えていたり、反対に飼育中に出る鶏糞は農業用の肥料として活用していたり。さらには、それらを食べて育つ鶏からたまごが生まれて…と、社会のサイクルの中で循環しているんです。ちなみに、全国を回っている間に4ヶ所の平飼いの養鶏場を見学に行きましたが、エサを発酵させているのは佐々江さんだけでした

鶏たちが産んでくれたたまごを一つ一つ拾い上げる

芳沢さん:研修の柱のもう一つがスイーツです。ささえさんは採れたたまごを使ってスイーツを販売するという6次的な取り組みをしています。自分が育てたたまごを販売することは考えていましたが、それをスイーツにすることは全く考えていなかったので発見でした。それに、自分でもスイーツが作れるようになるなんて思っていませんでした。

ささえたまご農園では採れたたまごを使ってさまざまなスイーツを作り、店頭で販売している

薗さん:研修でこうして実際に商品を販売してみたりすると、自分達が永平寺でやろうとしていることが実現した時の暮らしのイメージが湧きました。

芳沢さんが作ったシフォンケーキ。しっとりふわふわでとても美味しかった

佐々江さん:2人とも賢いし手先も器用で。私なんてシフォンケーキを作るのに2年くらいかかりましたが、わずか1ヶ月でマスターしているし、私より上手かもしれません(笑)。

■知識を与えるだけでなく、得ることもある

佐々江さんによると、新しい経験や知識を得たのは研修生の2人だけではなかったようです。

佐々江さん:芳沢さんの提案で、先日から「踊るにわとり大作戦」を始めたんです。人間も音楽を聴くとストレス解消になるといいますが、これは鶏でもそうなのだろうかと、試しにヒーリングミュージックをかけているんです。

鶏舎に設置されたコンポからは心地の良い音楽が流れていた

芳沢さん:確かテレビでやっていた「リズムを刻むことの効果」について佐々江さんと話していたんですよね。鶏にも効果があるのかやってみようとなって。先の話かと思っていたら、翌日には佐々江さんがコンポを移動させていたのでちょっと驚きました(笑)。

薗さん:エサをよく食べるようになりましたね。

佐々江さん:他にも、「マイたまごパック」も2人の提案からです。スタンプカードを作り、たまごパックの持参を促しています。

この取り組みも、たまごパックの使い捨てに目をつけた2人からの発案

芳沢さん:実際の商品があると、より良い方法を試行錯誤できて楽しいです。給料をもらう働き方とは違って、自分が作ったものを売って対価を得ることは自分の生活を作ることとイコールなんですよね。こうした感覚が暮らしの豊かさや精神的な豊かさに繋がるんだろうなと、これからの暮らしのイメージが湧きました。

佐々江さん:あと、驚いたのは、2人とも情報の発信がとても上手なんです。SNSなどを使いこなす力はやはり若い方はすごいです。2人の力を借りて農園のYouTubeチャンネルができたんですよ。スイーツの作り方などを撮影して投稿していますが、これは研修にも役立っていて。次に同じスイーツを作る際、このYouTubeを観ればポイントを復習しながら作れます。他にもささえたまご農園のH Pも新しくしてもらったり、LINEのアカウントを開設してもらったり…。私も2人から学ぶことがたくさんです

ささえたまご農園のチャンネルでは、執筆時点で既に15本の動画が公開されている

平飼いの養鶏家を目指す2人の行動力や情熱にも驚きや学びがたくさんありましたが、佐々江さんが敦賀で培ってきた養鶏の技術と2人の情報発信能力が組み合わさり、「ささえたまご農園」はさらにパワーアップした様子。2人は、引き続き佐々江さんのもとで研修を受けながら、春からは永平寺で鶏舎の建設を進めていく予定だそう。進捗は、ぜひ彼らのSNS等をご覧ください。

晴れのち、もっと晴れ|古民家リノベと田舎移住
(芳沢郁哉・薗有希)

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