ささえたまご農園研修生にインタビュー(前編)

養鶏を学びに敦賀へ2人の研修生とささえたまご農園のカンケイ


敦賀市と美浜町との境にあたる沓見エリア。細い路地を、住宅の合間をかき分けながら登っていくと、「ささえたまご農園」という養鶏所にたどり着きます。この農園で鶏を育て、たまごやスイーツを販売し、さらには料理教室や食育活動に尽力されるのが佐々江良一さんです。この農園に、2021年の12月、市外から2人の若き研修生がやってきました。永平寺町を拠点として活動をする移住者である彼らですが、なぜ佐々江さんのもとにやってきたのか、研修生の芳沢郁哉さんと薗有希さん、そして農園主の佐々江良一さんにインタビューしました。その模様を、前後半に分けてお届けします。

左:農園主の佐々江良一さん/中央:研修生の芳沢郁哉さん/右:研修生の薗有希さん

福井で理想の暮らしをつくる

まずは、研修生のお二人はどんな人物なのか、また永平寺町から敦賀まで研修にやってくる経緯に迫ります。

研修生の1人、芳沢さんは鯖江市出身で、現在27歳。大学から関東へ進学し、そのまま東京で4年間サラリーマンをしていましたが、2020年9月から一年半、バイクで日本一周の旅に出ます。

日本一周時代の芳沢さん

芳沢さん:旅の最中には、いろいろな出会いがありましたし、さまざまなことを経験させてもらいました。その中でも、養鶏家さんとや農家さんとの出会いには特に刺激を受け、彼らのような生活に憧れるようになりました。

旅の中で出会った養鶏や農業への興味が、永平寺町の里山に住むお祖母様の古民家の活用へと結びつきます。そして2021年の夏、旅の途中で出会ったパートナーの薗さんと二人で永平寺町と移住することに。突然里山へ移住とはきっと戸惑ったのではと思いきや、意外にも薗さんは「抵抗はなかったですね」と。

芳沢さんのお宅は、永平寺町の中でも勝山寄りにある緑豊かな里山
現在は、芳沢さんのお祖母様も含めた3人で、合掌造りの古民家に暮らす

薗さん:出身は京都ですが、もともと田舎や自然が好きだったんです。前は会社員として広島の古民家ホテルに勤めていましたが、その前から仕事でわりと地方を転々としていたので慣れてました。たまたま広島に勤めていたとき、勤め先のホテルに旅人の芳沢さんがやってきたんです。

そんなたくましい二人は、移住した夏からの半年間は、畑を開墾したり、古民家の改修をしたりと暮らしの土台作りをしてきたそう。そして、12月から佐々江さんもとで研修をしています

自宅周辺の鬱蒼とした土地を切り拓き、無農薬野菜を育てているそうだ

自分の行動が世の中を変えるきっかけになるかもしれない

着々と理想の暮らしを目指して着々と行動をしてきた彼らですが、なぜわざわざ拠点となる永平寺町から離れた敦賀を研修先に選んだのでしょうか。

山の中腹にあるささえたまご農園の鶏舎近くからは敦賀の街並みが少し見える

芳沢さん:それは、「ささえたまご農園」さんが、平飼い・自然卵の農家さんだからです。平飼いというのは、平らな地面に鶏を離して飼う養鶏法で、鶏に与えるストレスがより少ないとされています。僕が養鶏に興味を持つきっかけとなった、佐賀県にある本間農園さんも同じように平飼いで鶏を飼育していました。

本間さんから養鶏の現状やスーパーで売られているたまごが作られる過程を聞いて、普段食べている卵が安全なのかというと多分そうではないんだなと思ってしまったんです。食べないという選択もできるけれど、自分で作ることができたら、自分が提供したたまごを通して他の誰かにも知ってもらえますよね。歴史的に見ても人間と鶏の付き合いが長く、たまごは今やどの家庭にもあります。身近なものだからこそ、世の中に与えられるインパクトも大きいのではないかと思ったんです。

平飼いで飼育されるささえたまご農園の鶏たち。日本ではケージ飼いが主流だが、アニマルウェルフェアの観点から諸外国ではケージフリー(平飼い)への移行が進んでいる

研修先のアテンドは県に依頼。彼らの思い聞いた県の担当者から紹介されたのが敦賀の「ささえたまご農園」でした。実は、佐々江さんは県から指導農業士の指定を受けており、これまでにもインターンシップとして研修生を受け入れてきた実績があるのです。

佐々江さん:うちでは、15年ほど前からインターンシップの受け入れを初め、これまでに合計10人ほどを受け入れてきました。ただ2人に関してはちょっと特殊で、1年間に及ぶ「里親」という形です。これだけの長期間の受け入れは初めてです。最初はインターンシップの制度を活用してきていただきましたが、その上でさらに長期の研修を希望するということで、本当に養鶏が好きなのだなと思い、迎えました。好きでなければこの仕事は続きませんから

こうして2人は、11月に2日間のインターンシップを受けた後、国による新規就農促進のための「農業次世代人材投資事業(準備型)」を活用し、12月から1年間の研修を始めたのでした。

日本一周をきっかけに、移住、古民家改修、農業、養鶏研修…etcと、目まぐるしくも楽しそうに活動している2人の背景が見えてきました。では、実際に佐々江さんのもとで日々どのように養鶏を学んでいるのでしょうか?気になる研修の内容は後半記事をご覧ください。






晴れのち、もっと晴れ|古民家リノベと田舎移住
(芳沢郁哉・薗有希)

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Photo:晴れのち、もっと晴れ / 西山綾加