(一社)敦賀観光協会・西ノ上健さんにインタビュー(上)

度重なる困難を乗り越えて開催する、敦賀とうろう流しと大花火大会の工夫

2020年に突如現れ、私たちの生活をすっかり変えてしまったコロナウイルス。感染拡大防止のため、各地でイベント自粛が相次ぎ、敦賀市でもいくつもの行事が中止を余儀なくされています。しかしそんな状況下でも、先人の想いを絶やすことなく、時代に合わせた方法で開催しているイベントがあります。それが、「とうろう流しと大花火大会」です。

コロナ禍に合わせ来客を分散させ、さらに花火大会はオンラインで開催と、そのスタイルは大きく変化しました。一体このアイデアはどのように生まれたのか、またお客さんの反応はどうだったのか?今回は、「とうろう流しと大花火大会」の主催である一般社団法人敦賀観光協会から、担当の西ノ上健さんに開催に向けた取り組みについてうかがいました。


一般社団法人敦賀観光協会で、「とうろう流しと大花火大会」を担当する西ノ上健さん。

■故人の冥福を祈る伝統行事

とうろう流しと大花火大会は、敦賀市松原に位置する景勝地、気比の松原で毎年旧盆にあたる8月16日に開催される伝統行事で、今年で72回目を迎えました。

水面にはとうろう、頭上には花火の灯りが。



西ノ上さん:「始まりは1950年と戦後まもない頃、戦没者慰霊のためにとうろう流しが始まりました。当初は花火はなかったようです。1954年には花火の写真が記録されています。この事からとうろう流しが始まった数年後から花火大会も始まったことがわかりますが、その具体的な開始年度はわかっていません。その後1999年の敦賀港開港100周年をきっかけに、1万発の花火を打ち上げ、規模を大きく拡大しました。現在は打ち上げ総数約1万3000発と、日本海側最大級を誇っています」




花火というと今でこそ娯楽のイメージがありますが、日本初の花火大会と言われる隅田川花火大会の発祥も、疫病による死者を慰霊するためだったとか。とうろう流しと同様、戦没者慰霊の想いから始まり、現在では広く故人を偲ぶ行事として敦賀に定着しています。

■災害に疫病…。伝統行事をどう守る?

しかしそんな伝統ある行事も、近年は不遇が続いています。今回お話をうかがった西ノ上さんは、2010年からとうろう作りの統括を担当。2019年からは行事全体を前任者とともに担当していますが、初年度である一昨年は台風で花火大会が中止。昨年から今年にかけてはコロナウイルスの感染拡大と、従来の方法からの変更を余儀なくされました。

2019年以前のとうろう流しと花火大会の様子



西ノ上さん:「一昨年は、花火大会こそ中止でしたが、伝統行事として、とうろう流しは台風の年にも、台風の中で準備を進めて開催しました。当日は天候が回復し、花火大会は中止となったものの、とうろう流しは予定通り開催しました。しかし、今回のコロナウイルスに関しては、そもそも松原海岸に多くの人が集まるという状況を避けなければなりません。絶やすことのなかったこの行事をなんとしてでも開催する方法はないかとさまざまな対策を考えました」





敦賀観光協会では、まず3密対策として、とうろうの放流時間を夕方だけでなく一日中流せるよう販売時間を拡大し、読経の開催時刻はお客様の集中を避けるために非公開。そしてイベント当日だけでなく、準備期間のとうろう作りの際にも手指の消毒など徹底した感染症対策を掲げ、関係各所へ相談に行ったといいます。

とうろう作りの会場となる、敦賀市立松原小学校の体育館



西ノ上さん:「この行事は、とうろうを作っていただくシルバー人材センターの方、とうろう作りの会場をお借りする松原小学校さん、そして会場でお経をあげていただく寺院の方々など、多くの方の協力で成り立っています。コロナ禍の開催においても、関係者皆様の同意が必要と考え、各所へ開催の相談に行きました。新しい様式での開催をご提案させていただいたところ、皆さん二つ返事で賛成いただいて。この行事がまちの誇り、伝統として深く根付いていることを改めて実感しました」


■花火大会も新しいスタイルで。緊急事態宣言下で浮かんだアイデア

一方で、例年通りの開催は中止が決まった花火大会も、ただ中止にするだけに止まりませんでした。


2020nねねnね



西ノ上さん:「ちょうど、全国で緊急事態宣言が出て、私も在宅勤務をしていたころのことです。通常通りの花火大会ができないとしても、子供達に花火を見せてあげたい。安心して楽しめる方法はないだろうか、と考えていたところ、自宅のテレビが目に入って。自宅だったら安全に楽しめるのではと。花火は毎年テーマが違いますから、記録してある過去の映像を編集して、いろんな年の花火を一気に見られたら楽しいのではと、思いついたのです」



花火の新しい様式とは、オンラインでの開催。YouTubeに過去の映像を放映することを念頭に、西ノ上さんは制作会社に相談をします。しかし、思いもよらぬ落とし穴が。


西ノ上さん:「実は、権利の関係で過去の映像をYouTubeで流すことはできないことがわかりまして…。何か他に方法はないかと、制作会社の福井テレビ開発さんに相談したところ、『CGはどうか?』とご提案いただいて。めちゃめちゃ良いなと思ったんです」


光明を見出した西ノ上さん。CGとはいえ、従来の敦賀の花火大会を思い出してもらえるよう、「かなり本物に近い演出にこだわった」と言います。

YouTube「#おうちで敦賀花火大会」より。
花火打ち上げ前には、松原海岸から見える夕暮れを忠実に再現。


西ノ上さん:「忠実に再現するため、製作者の方には過去の映像を全て見ていただきました。浜から花火が打ち上がる台船までの距離を一つ一つ計測して、上空何mに打ち上がるかまでも緻密に計測しているんですよ。花火打ち上げ前には、定点の気比の松原が映し出されるのですが、徐々に日が暮れていく様子や、海に浮かぶとうろう、敦賀らしいテーマを設けた花火と音楽の演出や豪華なフィナーレなど、とにかく再現度にこだわりました




感染症という不測の事態に屈することなく、伝統行事を続ける方法を考え続けた主催の敦賀観光協会や関係者の方々。果たしてその変化にお客様はどのような反応を見せたのでしょうか?そして、昨年を経て今年の開催は?後半へ続きます。

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