さわだはるかさんにインタビュー

展示空間に表現した、
「さわださんにとっての敦賀」とは。

10月30日から11月7日にかけて、本町一丁目の空き店舗を利用した展示会「わたしとつるが展」を開催しました。

今回は、写真表現を用いて展示会を行いましたが、ただ写真を見るだけの展示会にはしたくないと思い、空間づくりにこだわりました。その際にお力をお借りしたのが、鯖江市在住のアーティスト、さわだはるかさん。アートディレクターとして、空間づくりとチラシのデザインをお願いしました。「『わたしとつるが』の“わたし”の一人として、さわださんにとっての敦賀を表現してください」という無茶なお願いでしたが、素敵な空間を作ってくださいました。今回のインタビューでは、さわださんの目には敦賀がどう写り、それをどのように作品に落とし込んだのかうかがいました。

▼わたしとつるが展の説明はこちらのnoteをご覧ください。
note:10月30日から「わたしとつるが展」を開催します。


アートディレクションを担当していただいたさわださん


■敦賀の暮らしに触れ、変化したまちへのイメージ

―「わたしとつるが展」で関わる以前から、敦賀との接点はありましたか?

さわださん:実は今回の展示に関わるまでは、全然無くて。わたしにとっての敦賀のイメージは関西方面に向かう途中に見える工場地帯の風景でした。エネルギーのまちということは知っていたのでそれも相まってなんとなく無機質なイメージが強かったです。

鯖江から関西方面に向かう途中には、火力発電所やセメント工場などが立ち並ぶ。写真は天筒山から撮影したセメント工場。

―展示会に関わっていただいて、そのイメージは変化しましたか?

さわださん:下見や打ち合わせで何度か敦賀に来て、案内してもらったのが商店街。少し入り込んでみると、もっと人間的な部分が見えてきて、人の温かさを感じました。でも、全国どこにでもある商店街とは何か違う雰囲気があって。やはり外から見た時のイメージが反映されているのかもしれません。無機質な部分と、人間らしい有機的な部分、その対照さを表現したのが今回のメインビジュアルでした。

さわださんがデザインしたメインビジュアルは、ポスターやチラシになりました。


―大胆に引かれた赤い線が印象的ですよね。正直最初に見た時は、生々しさというか、ちょっと狂気的なものを感じました。

さわださん:この線は人間らしさ、人の痕跡を表しているんです。筆と絵の具を使って描きました。ヴィジュアル全体は商店街の地図になっていて、写真もなるべく実際の位置に近い写真を並べています。無機質な四角の写真の上に、わたしの手書きの線を加えることで、「わたしにとっての敦賀」を表しています。



■写真から感じた「よそ者視点」と「ネオノスタルジー」

―まさにこのチラシが表しているのが、敦賀に関わることで変化した部分も含めた「さわださんにとっての敦賀」ということですよね。チラシに並べられた写真や展示に使用した写真からも、「人間らしさ」を感じましたか?

さわださん:感じましたね。でも単純に温かみがあるとかではなくて、対局にあるようなもの寂しい写真もある。食ばかりを撮る人もいれば、夜の街の様子を撮る人もいる。撮影する人で撮る物も、撮り方も違うというところに撮影者の「人間らしさ」が見えます。それぞれが敦賀にやって来た時期や、当時の心境なども含めて人間味なのかなと思うのですが、それが写真に現れているように感じました。そういうのを「よそ者視点」と言うのかもしれません。

氣比神宮と人の営み。神聖な場所である神社の中で行われる人の活動に対照性がある。

―お気に入りの写真はありますか?

さわださん:会場内で一番大きく展示した、牽引されていくボートを車から撮影したやつです。あとは、あやかちゃんが撮った「よいこの村手の浦公園」の写真も好きです。ネオノスタルジーって感じ。懐かしいとはちょっと違って、懐かしさを感じるけど決して古くはないもの。私の造語なんですが、現代を生きる懐かしさというところでしょうか。昔からあって、今も時代に合わせて少しずつ変化しているのを感じます。実際にこの光景を見た時にもそう感じるかはわからないけれど。



■展示会場に表現された「さわださんにとっての敦賀」


―では、そんな写真たちを空間に展示するにあたって、どんなことを意識しましたか?

さわださん:会場づくりで意識したのは「もの寂しさ」です。あやかちゃんに連れて行ってもらった敦賀の海沿いのエリアや、嶺北から関西に向かう時のイメージがやはり私には刷り込まれていて。ちょっとマイナスイメージのある言葉かもしれませんが、決してそんなことはなくて、私にとっては創作の原動力です。「元気いっぱいの明るいものを作ってください」と依頼されるよりも、もっと複雑な感情が入り混じるものの方が惹かれるんです。だからこそ、今回の展示の企画にも自然と興味が持てたのかもしれません。「わたしとつるが」という冊子は、街のことを一個人の視点で扱っているところが魅力だと思うので。そういうことをしている人がいるのも面白いなと思いました。

―会場を暗くするというのは、「ただの美しい写真ではないからこそ、一枚一枚に注視してもらえるようにするため」と聞いていましたが、さわださんから見た敦賀のイメージも反映されていたんですね。会場となった「メンバーズクラブ橘」の雰囲気にも合っていました。

さわださん:そうですね。写真一枚一枚をじっくり見て楽しんで欲しいけれど、プラスして「写真が置いてある風景を楽しんで欲しい」という思いで空間構成を考えました。私が主観的に表現している部分もありますが、写真が置いてある場所の様子や、敦賀の持つ空気感などを見てもらいたいなと。この展示が誰かの心象風景として記憶に残っていてくれたら嬉しいです。

ー最後に、この展示に関わってみてどうでしたか?

何回か綾加ちゃんには言ったけど、もうちょっと遊びたいよね、敦賀で(笑)

今回私は、わたしとつるがの中の”わたし”の一人として関わらせてもらっているけれど、敦賀のことは写真を提供してくれた人と同じくらいか、もしくはそれ以上に知りません。空気感とかもただの知ったかぶりかもしれない。今感じたままでしか空間を作れないけれど、そういう今の状況も含め”わたし”の中の一つで良いのかなと思いました。

―今のさわださんと敦賀の関係性だからこそできた表現だったということですね。今回は展示に関わっていただきましたが、きっとまたプライベートでも遊びにきてくださるはず。そうした中で「さわださんにとっての敦賀」が今後どのように変化していくのかわたしも楽しみです。またぜひ遊びに来てください!